第三回 元素戦略に基づいた触媒設計シンポジウム

昨年11月の第二回に引き続き、今年(2015年12月4日)も参加しました。この研究会の目的は、貴金属ベースの触媒をクラーク数の大きい元素で置き換えるための研究開発を進めるにあたり、関係者の情報交換を行う場を提供するというものです。 

貴金属を扱う企業に長年勤めていたものとしては、どのような方向へ技術が進むのか注視しておきたいということで、貴重な勉強の場として昨年から参加しています。 

今年の発表で一番興味があったのは、岩手大学の竹口竜弥教授のPt-Ru系触媒の講演です。脱貴金属の話には直接つながらないのですが、現状の燃料電池のアノード触媒に使われている耐CO被毒触媒の性能を向上させるための研究について発表されました。 

ポイントはPt-Ru系にSnO2を添加するというもので、これで市販のPt-Ru触媒よりも耐CO被毒性が向上するという結果が示されていました。長期間の耐久性等は未確認ですが、興味深い進展でした。 

竹口先生の講演の中で、Pt-Ru触媒の耐CO被毒性を発現する機構が、従来言われていた内容ともしかしたら異なるのではないだろうかという問題提起がありまあした。これはCOストリッピングボルタンメトリーの結果が、そのままセルでの評価に対応しないことがあるということで、私もその点には非常に同意すると質問時間の時に発言させていただきました。今後の竹口先生の研究が進み、従来の耐CO被毒性発現機構と異なる機構が出てくるのか、注視したいと思います。 

当日の他の講演の中で、産総研の難波哲哉氏の「Ag触媒上でのスス燃焼」が興味深かったです。ディーゼルエンジンからのPM(パーティキュレートマター)燃焼についてですが、Ptに換わりAg触媒で十分に性能が得られるようになると、資源の面でも大きな進展になると思われます。 

余談ですが、当研究会の統括は京都大学の田中庸裕教授で、私が学生時代に大学の研究室にいた時に助手として赴任していた先生です。「アホ、ボケ、カス」と関西弁でいつも罵倒され(関西人特有の激励?)ていましたが、お互いすぐ近くに住んでいたこともあり、一緒に帰宅途中で晩御飯(酒飲みですが)をよくご馳走になったりしていました。社会人になってからはほとんどお会いすることが無かったのですが、先生とは年一回の貴重な顔合わせの場ともなっています。 

それにしても、貴金属はなぜこれほどの触媒性能を持つのでしょうか。貴金属代替触媒を開発することは並大抵の事ではありませんが、資源量の事を考えると重要な研究開発だと思います。

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