日本技術士会化学部会1月度講演会

講演1:「地球温暖化予測の現状とこれから」
渡部雅浩氏(東京大学大気海洋研究所准教授)
化学部会での2016年最初の講演会の外部講師による講演でした。長期観測データから地球温暖化が進んでいることは事実であり、地球温暖化の「予測」シミュレーションついて多くの説明がありました。 

シミュレーションはすべて一人でできるものではなく、いろいろな分野の人たちが協力して進める必要があるとのことで、非常に大変な作業であることが感じられました。全く分野が違う者にとっては、シミュレーションするための計算がどの様なプログラムで動いているのかは全く想像がつきませんが、大気中のCO2濃度と温暖化の関連がきちんと示される結果となっていました。 

質疑応答の時に、「CO2排出を抑制するために、研究者として何か行動するつもりはないのか」という様な主旨の質問に対しては、「CO2排出抑制のためにどうするべきかを目的に研究をしているわけではなく、純粋に地球温暖化がどの様なメカニズムで進むのかをシミュレーションしている」という内容の回答がありました(メモが無いため、当時の記憶で書いています)。さらに、欧米ではいわゆる「御用学者」の様にCO2犯人説を否定するために研究をしている学者がいるが、少なくとも先生はそのような事は全くなく、どちらの側に立つこともなく研究を進めているというお話をされていました。 

CO2が温暖化の元凶であるかどうかの結論はさておき、CO2の排出を減らすという事は化石燃料の使用量を減らすことにつながります。貴重な化石燃料資源をこれからずっと先の世代まで長く使えるよう、我々の世代は使用量削減のために努力しなくてはなりません(石油産油国にとっては大きな経済問題ですが、ここでは論じません)。石油・天然ガス等はできるだけ有用な化学製品を製造するためには使用するが、ただ燃焼させて熱エネルギーにしてしまうのは何とももったいないことだという事をもっと認識しなくてはならないと思います(熱エネルギーにしか利用できないような残渣分は、ありがたく熱エネルギーとして最後は利用すべきですが)。 

たまにふと思うのですが、化石燃料が経済的に生産できなくなる時はいつか必ず来るはずです。一体それがいつになるのか、その時の人類はどのような生活を送ることになるのか、石油の奪い合いによる戦争が起きないことを祈るばかりですが、我々の世代で何ができるのか考え続け、できることをしていきたいと思います。

講演2「化学物質管理のためのリスク評価・リスク管理概論」
伊藤雄二氏(有限会社相模ソリューション、技術士(化学部門))
昨年、日本技術士会化学部会の中に「化学物質管理研究会」が発足し、非常に時機を得た講演でした。私は当研究会の幹事役の一人として会の運営に関わっているのですが、なかなか自分で勉強をするのが大変で、このような勉強の機会があるのは大変有難いです。

化学物質管理という業務は今後ますます重要になるのは間違いなく、化学物質によるリスクを低減するために、我々のような化学部門の技術士が活躍すべき場面が多くなると思われます。そのためにも「化学物質管理研究会」の活動を通じ、社会へ貢献できるような仕事をしていけたらと思います。

さて伊藤氏は株式会社日本触媒で長らく仕事をされてきた方です。私が大学時代にいた研究室は固体酸塩基触媒の研究で有名だったのですが、日本触媒とも非常にお付き合いが深く、私が学生の時には日本触媒から研究室に一人派遣され、共同研究をしていたこともありました。また、伊藤氏は京都大学工学部石油化学専攻を修了されているのですが、私の大学時代の研究室の助手の先生はそこで学位を取った方で、この日は非常に身近に感じる人と知り合うことができた日でした。

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