「答えは現場にある」(2/2)

(1/2からの続き)

現場の作業者や責任者から再びあれこれ細かいことを聞きながらある製造工程を見ていると、不具合製品とその工程がどうも何か関連がありそうだという推測が沸き上がってきました。

その推測を確認するために、確認実験を行うこととしました。自分一人ではできないことが多く、現場の人たちに面倒なお願いをしながらだったのですが、今になって思うのは、あの時の皆さんの協力が無かったら原因究明はできなかったでしょう。現場の皆さんには本当に感謝しています。

確認実験が進むにつれ、自分の推測はかなり可能性が高いのではという思いが少しずつ強くなってきました。過去に不具合調査をした人の結論とは全く異なる内容だったため、慎重に筋道を考えながら実験や分析作業を進めていきました。

自分の推測を裏付けるデータがある程度集まったところで、推測を確証に変えるために、最後は不具合の再現実験を行うことにしました。しかし実際の製造装置で行うことができないため、次善の策として実際の工程により近い条件で再現実験を行うこととしました。

試料を準備し、自分の推論に基づき試料の処理を行い、最後は一晩放置となりました。再現されるだろうという自信はある程度ありましたが、当然100%はあり得ません。次の日に何も変わっていなかったらどうしようかと、特にアイデアは無い状態でした。

祈るような思いで一晩過ごし、次の日いつも通りグループ朝一番で出社して実験室へ行き、仕掛けておいた試料を見た瞬間、「よしっ、やった!!」と感激したのを今でも思い出します。

これまでの経緯をまとめ、改善策を策定し、あとは実際に現場に適用するだけです。実際にはすぐに解決したわけではなく、思いもしなかったことが現場で度々起こりました。ここでも現場関係者にはいろいろと協力してもらいながら作業を進め、何とか工程の改善を完了することができました。

不具合の原因が判明し、改善された製造工程でスムーズに製品が製造できるようなるまでに、調査開始から1年くらいかかってしまったでしょうか。しかしそれ以来、不具合が起こることは無く、長年解決できなかった問題が解決できたのは大きな成果でした。現場をしっかりと何度もしつこく観察しなかったならば、そのような結果は得られなかっただろうと確信しています。まさに「答えは現場にある」を実感しました。

ただし、現場をただ観察するだけでは何も見えてきません。必要な情報を収集し、様々な切り口でデータを見つめることも同時に必要です。多様な切り口で現場の情報やデータを解析し、それらをつなぎ合わせていく能力は、一朝一夕に身に付くものではありません。基本的な知識を蓄積しつつ、様々な経験を積んでいくしかないのかなと個人的には思います。

私もまだまだ精進が必要ですが、若い世代の技術者を育てていくためには、指導する側の資質・能力も問われているのだということを忘れずにいたいものです。

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